アテに合わせ味を変える!?  山中温泉の旨い酒

今から1300年前、奈良時代の高僧であった行基が発見し、元禄の時代に日本各地を旅し、「奥の細道」を綴った俳聖・松尾芭蕉が、有馬・草津と並ぶ三名湯として讃えた山中温泉。

そこで作られる旨い酒があります。その酒は、雑誌散歩の達人の東京日本酒マップという特集で、今飲みたい日本酒20選にも選ばれていて、実際にお目にかかる機会をうかがっていました。

先日その日本酒に出会えたので、ご紹介していきましょう。
78277ec5724c2fa01e80786675722d1a_s
出展:無料写真素材写真AC

◎山中温泉と医王寺、そして薬水(くすりみず)


山中温泉は、石川県加賀市にある温泉で、開湯より1300年の歴史があります。

発見は、奈良時代の高僧の行基。行基はこの地で、丸太に薬師仏を刻んで祠を造り、温泉の守り神としたと伝わっています。

その後、平安末期に能登の地頭・長谷部信連が12軒の湯治の宿を開き、それが山中温泉旅館の始まりとなったといわれています。

温泉街を見下す高台には、「忘れしゃんすな  山中道を  東ゃ松山  西ゃ薬師」と山中節の中で歌われている、西の薬師と呼ばれる医王寺があり、境内には「甘露水」「薬水」と呼ばれる美味しい水も湧いています。

代々この医王寺の住職は、閼伽水(仏前に供げる水)として、この水を供え、その後飲用しているそうです。

そして、この水は、今回ご紹介する日本湯の仕込み水としても使われています。

早速、今回の日本酒をご紹介していきましょう。
niponsyu
photo by らぶらどらいと

◎松浦酒造 獅子の里 純米吟醸 糀オリゼー カメレオンを味わう

今回ご紹介する、「獅子の里 純米吟醸 糀オリゼー カメレオン」は、飲食店向けで一般向けには販売していないお酒です。

冒頭で紹介した雑誌で、個性的なラベルを見て以来、一度飲んでみたいと思い、酒店やお酒を扱うネットショップなどで探してみましたが見つからず、詳しい方に聞いたところ、一般では流通していないということを教えてもらいました。

名前の由来を一つずつ説明していくと、「オリゼー」は、麹菌の学名「アスペルギルス・オリゼー」からのもの。また、カメレオンの由来は、「春夏秋冬の様々な味わい豊富な肴達に色あせる事無く、共に寄り添って行くお酒。食と共に色を変化させるお酒」というコンセプトがあり、食と共に変化させるという部分が、折々で自身の身体の色を変えていくカメレオンと重なるから、と推測されます。

実際飲んでみると、凛とした爽やかさが際立ちながらも、香り、味わいは穏やか、かつ、まろやで優しいお米の味がしっかり伝わってきます。

飲んでいるうち温度が上がり、常温に近づくにつれて、刻々と味が変わっていき、よりふくよかな味わいになっていくのが、面白く、魅力的でした。これがカメレオンなのだなと感じながら味わいました。

「獅子の里」というのは、こちらを醸す松浦醸造さんの銘柄で、山中温泉ではその昔、宿に内湯が無かった時代があり、湯治客を町の中央にある湯座屋へ案内する湯女(ゆな)という女性がいたそうです。

彼女たちが湯治客の浴衣を頭からかぶって待っており、その姿が獅子に似ていたため、「獅子」と呼ばれていたそうです。その「獅子」を取り、獅子の里という銘柄が生まれたそうです。

その獅子の里のなかでも、「カメレオン」は、飲食店にしか卸されていないため、出会えるのはずいぶんレアだとのことです。出会えたら、ぜひ味わってみてください。ということで、次では出会えたお店と、その料理が大変美味しかったのでご紹介していきます。

◎このお酒が飲めたお店 酒菜家(さかなや)池袋


nihonsyu2
photo by らぶらどらいと
  
カメレオンが飲めたのは、池袋駅の西口、北口から歩いて3分くらいのところにある、地酒道楽「酒菜家」(さかなや)さん。ビルの二階にあり、かがまないと通れない小さな古風な引き戸を開けて、中に入るのもワクワクしました。

入ると中は、にぎやかで、カウンターや掘りごたつなど様々な座席があります。地酒道楽とうたうだけあり、日本酒の種類も豊富です。日本酒は、0.7合/1.4合/2合と3種の量で価格が設定されていて、一つの銘柄をじっくり味わうもよし、飲み比べを楽しむもよしという形になっています。

写真の料理は、左が三種のお通し、右が鰤のなめろうです。鯵のなめろうは、よく聞きますが、鰤は珍しいのでいただいてみました。新鮮な鰤の味わいとほどよいお味噌の風味が、よりお酒を引き立ててくれました。

写真はないのですが、春野菜の白和え、てんぷら、銀鱈の西京味噌漬け焼きなどもいただき、どれもうなる美味しさでした。
nihonsyu3
photo by らぶらどらいと

黄色いメニューは、貴醸酒(きじょうしゅ)と呼ばれる、仕込み水にお酒を使って醸される日本酒で、一種類でも置いているお店は珍しいのですが、酒菜家さんには、複数置いてありました。

季節で置いているお酒は変わるそうなので、必ずカメレオンに会えるとは限りませんが、カメレオン以外にも美味しく、また、味わいも多岐にわたる日本酒が揃っていましたので、ぜひ、足を運んでみてくださいね。

~~~~~~~~~~~
【らぶちゃん4月・5月 セッション・ワークショップ等お知らせ】
~~~~~~~~~~~