第10回ジオマンシーショートストーリー ケース10「悲しみ」〜マイの場合〜

第10回ジオマンシーショートストーリー

ジオマンシーは、アラビア生まれのとても当たる占いです。ジオマンシーの16のシンボルにまつわる物語を、一話完結のショートストーリーとしてご紹介していきます。

ケース10「悲しみ」〜マイの場合〜


出典:無料素材画像 写真AC

マイは、大学の卒業旅行について、占ってみた。

就職前ギリギリの3月になったのは、みんなの就職が決まるのを待っていたからだ。卒業したらバラバラになってしまうから、絶対に最高の思い出にしたい。

ジオマンシー占いの本を見ながらサイコロを転がす。

出た目をかぞえて、本で確認する。

「2、4、6、1……え~、悲しみ? マジ?」

出た答は、「どうにもできない宿命的な悲しみ」。

「ウソ。やだ」

本には、旅行を占ってこのシンボルが出たらトラブル発生の可能性があるので、対策と準備をしておくとよい、と書いてあった。マイは、元来、ポジティブ思考だ。

「そうだよね。占いは警告なんだから、対策しておけばいいんだよ」

行程も宿泊先も間違いがないように何度も確認して、万一のときの代替案も用意した。体調も万全に整えて、できるかぎりの準備をした。

せっかくの楽しい旅行に水を差したくなかったから、みんなには占いの結果は言わなかった。そのぶん、自分がしっかり準備しておけばいい。

なのに。

誰も想像していなかった。

考えもしなかった。

想定外の新型肺炎蔓延の影響で、旅行が中止になってしまった。

その日、みんなで、ファミレスに集まった。

「秋にしとけばよかった」

ひとりがつぶやいた。最後まで就職が決まらなかった子が肩をふるわせた。

「ごめん……あたしのせい」

「違うよ!」マイは思わず体を乗りだしていた。

「誰も悪くないよ。誰にもどうやっても、どうにもできないことだったんだよ。誰のせいでもないよ!」

万全の対策をしても、かなわなかった。何をどうしても、どうにもならないことがある。そのときできることは……。

「あたし、悲しいよ。ただただ、すごく悲しい」

マイの言葉に、みんな、こらえていたものがあふれたかのように、嗚咽を漏らした。

ただ、悲しむことだけ……。

その日、ファミレスから居酒屋に移動して、みんなで朝まで痛飲した。

楽しみにしていた卒業旅行は行けなかったけれど、旅行中止と決まった日に悲しみを共有したことがそのあと何年もずっと、定番の思い出話になった。

今度、マイは結婚する。


出典:無料素材画像 写真AC

久しぶりに大学時代のみんなが集まる予定だ。

心弾ける楽しい時も、胸千切れるほど悲しい時も、どちらも同じくらい仲間との絆を深めてくれた。

だから。結婚式で誓う「喜びも悲しみもともに」という言葉、みんな心からうなずいてくれるはずだ。

 

ジオマンシーシンボル「悲しみ」のキーワード

不幸。受難。宿命。耐えるしかないとき。

*画像は「ジオマンシーカード」「ハピタマ!」です。

 

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